Vol.41

穴あきジーパンとBESS

初めてBESSの展示場に行ってきました。ずいぶんラフな家ですね。どんな考えで家をつくってるんですか。

BIGFOOTBOY

 あれはもう40年前になるのか、海の向こう、ロンドンで、なにか得体のしれない熱気が沸き上がっているというウワサが、たなびく煙のように伝わってきた。インターネットなんてない時代。雑誌のとぎれとぎれの情報が、かえって好奇心と期待感を掻き立てた。―今までの音楽をブッ飛ばすような強烈な(サウンド)だって? 刺激的な歌詞? おまけに、穴あきジーンズだって? フツーの毎日に飽き足らなさを感じていたオイラは、いまだ体験せぬ“何か”に熱い思いをたぎらせた。そう、1970年代後半、乾いた草原に火を放ったように燃え上がったパンク・ロック。
 様々な変遷を経て巨大産業化した当時のロック・ビジネス。最新機材とテクノロジーを駆使して、高音質のサウンドと演奏テクニックを重視する音楽観。スタジアム級の大きな会場での派手な演出のコンサート。複雑化し、高価な“鑑賞品”のような楽曲。そんな肥大化した音楽シーンに、パンク・ロックは“NO!”を叩きつけた。ラフなサウンドで、ロック本来の原初的衝動を表現した。汗が飛び散る小さな会場での押し合いへし合いのライブ。DIY(Do It Yourself.)をスローガンに、楽器を手にした誰でもが“表現者”として楽しめるシンプルな曲。産業化に飲まれ手の届かないような高みから、ストリートと暮らしの音楽へと取りもどした。穴あきジーンズは硬直化した価値観に対する反逆のシンボルだった。そのスピリットは、時代を経ても脈々と受け継がれ、現在活躍するミュージシャンもその影響を口にし、イキイキとした音楽で体現している・・・
 BESSはロックをやるわけじゃないけど、どこかパンクの精神と通じるところもあるかな。シンプルなログハウスから生まれたBESSの家。最新テクノロジーに走る住宅産業に対して、「少~し原始に帰ろう」をスローガンに、「野っ原に天幕」の自由な暮らしを思い描いて家づくりをやっている。無垢材だから節やクラックのあるラフな質感は、まるで()れて破れたジーンズのテイスト。ボロックス合板は、パンクの名盤「Never Mind the Bollocks(ボロックス)(邦題:勝手にしやがれ!!)」から、「勝手に仕上げろ」の思いをこめて、勝手に拝借した。仲間を呼んでライブもできる土間。DIYはBESSライフの真骨頂。壁に釘を打って棚をつくったり、薪小屋つくったり、メンテナンスだって“Do It Yourself.”、イベントみたいに楽しんでる。パンクスの必須アイテム・革ジャンが磨けば味が出るみたいに、BESSの家も手をかければ年月とともに風格が増してくる。―パンクがオイラの心に火花を放ったように、原初的エネルギーに満ちたBESSの家が、フツーの暮らしに飽き足らない人たちへ、イキイキとした暮らしを届けんことを!

 ・・・で、40年前、いよいよ日本に押し寄せてきたパンク・ロックの波をかぶって、どうなったかって? ご覧の通りのミテクレと性格だよ。

オマケ:40年前、電車の中で、破れたジーパンはいて、空いた席に座ったら、隣のジェントルマンが不愉快そうに飛びすさった。オイラ、心の中でニヤッと笑ったもんだね。そんな時代だったんだよね。

「吐露byBESS」
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