Vol.45

「苦い」が「旨い」

BESSのLOGWAYに行ってきました。こんな家に住んだら、暮らし方も変わるんだろうな、と思いました。実際、たとえば、どんな暮らしをされてるんでしょうか。

BIGFOOTBOY

 毎年、秋になると、いや八月の空にウロコ雲がふっと浮かぶ頃になると、今年の季節の楽しみを占うかのように、テレビでも新聞でもネットでも話題になる―大きさは? 脂のノリは? そして値段は?そのイチイチにこんなにみんなの関心が集まるのは他にないんじゃないのかな。そう、秋の味覚の代表、サンマ。カタカナで書けばいかにも庶民の食卓の人気者、漢字で書けばぐっと雰囲気が増す、「あはれ 秋風よ」で始まる佐藤春夫の「秋刀魚の歌」も、妻に先立たれた初老の男の哀感を表す小津安二郎の「秋刀魚の味」も・・・(当て字遊びが好きだった夏目漱石の「三馬」は、なんともボリューミーで見ただけでお腹がいっぱいになりそう)
 背の暗青色と腹の銀白色のイキなコントラスト、脂が焼けるジュウジュウという音と立ち昇る香ばしさ(ジャズのナンバーじゃないけど「煙が目にしみる」)、パリパリに焼けた黄金の皮に箸先を刺し入れ身と骨を取り分ける細やかで楽しい作業、そしてスダチ、カボス、ユズ、レモン・・・好みの果実をしぼった大根おろしに熱々の身をジュっと浸して口に運べば、(今か今かと待ち受けていた)頬の内肉にじわっと染みわたる独特の旨味・・・ああ、五感が喜ぶ至福の瞬間!フランスの詩人マラルメは、平原を染める黄金色を「秋のシンバルが打ち下ろす最初の一撃」と表現したけど、おいらにとっての秋の到来は、脂の乗ったこの一口だね。
 タイにもマグロにもブリにもない独特の旨味、その秘訣はあのほろ苦いハラワタじゃなかな。ハラワタをよけて食べる人もいるみたいだけど、もったいない!おいらに言わせりゃあ、タコ焼きのタコを捨てるようなもん・・・とまでは言わないまでも、紅ショウガを抜いたようなシマリのない味になっちまう。
 身とハラワタ。いわば、正統と異端。優等生と不良。だけど、ハラワタのあの苦みが味に深みを与えているんだよね。BESSの家もそう。木をいっぱい使った、そういった意味じゃ正統的「木の家」だけど、(表面的にキレイキレイの優等生とは違う)節やクラックもある無垢材、ヨゴレを招きこむ土間、面積は取るのに部屋の数には入らないウッドデッキ、ムダを絵に描いたような吹き抜けとロフト、今どきテルテル坊主なんか誰も垂らさない軒下、手間のかかる薪ストーブ・・・そんなハラワタみたいな“異端”が、遊び心や、外とのつながりや、ゆったりした時間や・・・暮らしに深みと楽しさを生んでいるんだよね。
 「さんま苦いか塩っぱいか。」今夜も、BESSの家のウッドデッキで、何匹もの秋刀魚が七輪にあぶられてるんだろうな・・・ゴックン。

「吐露byBESS」
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