家を建てたあとから、本当の家づくりがはじまった

長野県下伊那郡 Kさん

ジャパネスクハウス / 延床面積120.12m2(36.4坪) / 3LDK+ロフト / [ BESS駒ヶ根 ]

展示場でこの家との運命的出会い。
家具の置き場所までが見えた。

天竜川の河岸段丘西岸に建ち、南アルプスの山々を遥かに臨み、蛇行する川の流れと緑の水田地帯を眼下に見下ろすK邸は2006年12月の竣工。 オーナーであるKさんのご自慢は、風光明媚なこの眺望と、周囲の景観にしっくり溶け込んでいる「程々の家」です。
「BESSの展示場でこのジャパネスクハウスを見て、妻ともども一目惚れでした。2人とも神社仏閣巡りが好きで、柱時計や文机などの古民具が大好き。 だから一見古民家風の『程々の家』のデザインに、すっかり心を奪われてしまいましたね」

2006年春、急遽、家を建てることになったKさんご夫妻は早速、近郊にある住宅総合展示場へ。 ところが、そこでお2人はいきなり出端をくじかれます。
「係の人にナントカ循環システムとかを長々と説明され、ぐったり疲れてしまって……。 最近の家は確かに高機能かもしれないけど、何だか作り物のように綺麗すぎて、『そこで暮らす』という実感がどうしても持てなかった。 家を建てようという決意も一気に揺らいでしまいました」
そのとき奥様が思い出したのが、いつか雑誌広告で見たBESS(当時はビッグフット)のログハウス。 そして翌週訪れた駒ヶ根のBESS展示場で一目惚れしたのが、この「程々の家」だったというわけです。 その素朴で味わい深い内装は、ここで長年暮らしているかのようにすぐに肌に馴染み、いま使っている家具の置き場所までイメージできたとか。 人と家との出会いにも、「運命」みたいなものがあるのかもしれません。

格子戸から午後の陽が差し込む居間で愛猫と戯れる。
「ごえもんといっても実はメスなんです(笑)」。

土地選びでは眺望にこだわり
天竜川の河岸段丘に住まう。

家のカタチとともに、Kさんがこだわったのはロケーション。とにかく、眺めがよくて気持ちいいところに家を建てたかったんだとか。
「土地選びに際して、子どもたちの学校からの距離はあえて無視しました。 というのも、子どもたちが学校に通う期間は3~6年と限られているし、やがて彼らは家を出ていくから。 一方、私たち夫婦はそこに一生住むわけですから、自分たちの好みを優先するべきだと考えました。
その結果、景観を重視することにしたのです」
眺めのいい土地を探して、域内をご夫妻でドライブ。 「こんなところに建てられたらいいね」と、昼間見た高台の土地をネットの不動産広告で発見したとき、またもKさんの心は震えました。何という偶然!
「この土地の南隣に神社があったので、神様のお導きかもしれません」
冒頭で紹介した眺望を活かすため、家はあえて東向きに建てました。
日中でも仄暗い室内から天竜川や南アルプスを見ると、映画館で映画を見るように、総天然色の絶景が眼に飛び込んできます。まさに絶景の借景です。

気持ちいい風が吹き抜ける広縁はK邸のサロン。遠く見えるのは南アルプスの3000m級の山々。

家を建ててからが本当の家作り。
「家が趣味」になって人生が一変。

現在の家で暮らし始めて、Kさんの日常は一変しました。「大袈裟ではなく、人生が変わった」とか。
奥様も次のように証言します。
「夫はとにかく家にいない人でした。釣りに写真に山登りと、休みにはかならずどこかへ外出していましたね。 ところが、この家に引っ越した途端、全然出かけなくなりました。休みの日には薪を割ったり、薪棚やフェンスを作ったり、庭で草花を育てたり、外壁をペンキで塗ったり。 いまや夫の趣味は『家仕事』といってもいいほどです」

自然の植生に近づけて作られたK邸の庭。
初夏にはサクランボを食べに毎朝ヒヨドリが訪れるとか。

奥様の趣味は機織りと染色。ときには家の居間が「工房」に。
「夫も私も手作りの工芸品が大好き」。

Kさん自身がこう補足してくれました。「人生が変わったのは、『家を建ててからが本当の家作り』というBESSの思想に共感したから。 BESSの家は基本性能に優れているけど、住人ニーズに先回りした余計な機能は付いていない。 そこに住みながら、自分流に仕上げていくんです。その工程がすごく愉しい」

登り梁が通る2階オープンスペースはKさんのオーディオルーム。
「木の家は響きがきれいなので気に入ってます」。

作り付けの書棚にたくさんの蔵書が並ぶ、Kさんの書斎兼仕事部屋。特に歴史物がお好きだとか。

祖父宅のシンクを持ち込むなど、あえて“昭和風”を意識したキッチン。
「すべて私の好み」と奥様。

Kさんの「家仕事」の中核にあるのが、居間に備え付けの薪ストーブ。
「自分で薪を割り、薪棚で1年かけて乾燥させるのは手間のかかる作業ですが、薪ストーブの暖房効率は抜群。 遠赤外線で、空気ではなく人体を直接暖めるので、マイナス10℃以下になる真冬もぽっかぽか。 おまけに手作りのピザやパンまで焼けます」ちなみに奥様の作るあんぱんやデニッシュは絶品です。

冬にはダイニングの薪ストーブが大活躍。「天板に鍋が3つ載るので、調理にも重宝しますよ」。

「薪ストーブを使うには、薪を切るチェーンソーや斧、薪を運ぶ軽トラックなど、ある程度の初期投資が必要。でも2年目以降は暖房費ゼロになりました。 ご近所のりんご園から、剪定した枝を大量にいただけるから。りんごの薪は燃えるとりんごのいい香りがするんですよ」

昼寝したり、BBQしたり。
広縁は自然と家族が集まるサロン。

Kさん一家のお気に入りの場所が「広縁」。約7畳の屋根付きウッドデッキです。

お二人とも、広縁にぼんやり座っている時間が好き。「この家では時間がゆっくり過ぎていきます」。

夏には涼しい風が吹き抜け、家中で一番居心地のよい空間に。息子さんはここに布団を敷き、素晴らしい景色を独り占めしながら昼寝するんだとか。一体どんな夢が見られるのでしょうか。
また、夏の間は天竜川流域で毎週のように花火大会が開かれるため、広縁は打ち上げ花火の特等席にもなります。

「広縁で七輪BBQ」はKさん一家の得意技。石川県の友人一家がアワビとサザエを大量に持参してくれたときの豪華海鮮BBQは、いまでも一家の語りぐさになっています。
「広縁はすだれを掛ければ部屋っぽく使えるし、台所の延長でもあり、自然と家族が集まるサロンでもあります。 ここを一番有効に活用しているのは息子たちかな?彼らは夏でも冬でも気が向いたときにここに集まり、七輪で肉などを焼いて食べていますね」
と、奥様。息子さんたちは家の仕事も手伝ってくれますが、薪割りが好きな子や、薪棚に薪をきっちり積むのに熱心な子など、それぞれ個性があるそうです。
「程々の家」を建て、どこにもない自分たちだけの「家」を作り始めたKさんご一家。父の家仕事は3人の息子さんたちにも受け継がれつつあり、K家の未来は河岸段丘からの眺めのように視界良好です。