「時間が経つと、さらに良い顔になる」
日常に溶け込んだ、かつての憧れ品
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光石 研
時間が生む独特の風合いや深みを愛する人にとって、経年劣化はむしろ「経年愉化」。
この番組では、経年をポジティブに受け止め、自分だけの楽しみ方を見つけている人を訪ねます。
今回は、古着や古道具に愛着を持ちながら長く使い続ける俳優の光石研さんにお話を伺いました。かつて憧れて買ったものや若い頃に時間を共にしてきたアイテムが、自分と一緒に歳を重ねていく面白さを探っていきます!
\ 本編はYouTubeにてお楽しみください! /
新品にはない、手垢がついたアイテムの魅力
元々子どもの頃から古着や古道具が好きで、ピカピカなものよりも、割と手垢が付いたもののほうが好きなんですよね。例えば木のテーブルにコップを置いておくと結露で輪染みができたりするじゃないですか。僕にとってはそんなちょっとした変化でも面白くて、じっと見てしまったりするんです。20代の頃に気合を入れて買った「RIMOWA」のスーツケースも、自分の手垢が付いていくとさらに愛着が増していきますね。空港職員にランダムに貼られたシールなんかも味になったり。つるっとしたものより、一個一個にざらっとした一面があるものの方が好きなのかもしれないですね。
少しのほつれや凹み、
マイナスな変化も日常に馴染んでいく
僕が20代の頃にものすごく流行った「セントジェームス」のバスクシャツは、買い足したりしながら今になっても着続けているアイテム。当時は自分をおしゃれに見せたくて少し背伸びをして買ったんだと思うんですけど、今やそのブームも2周も3周もして、日常に馴染む一着になっています。
何十年と使って現れる首元のほつれやスーツケースの凹みなど、劣化と捉えられてしまうようなところも、僕からすると嬉しい変化。憧れて買った特別なものが何十年経ってようやく自分に馴染んできた感じがするんですよね。年を重ねるに連れて特別なものじゃなくなっていく様をポジティブに楽しめたら、経年する過程も楽しめると思います。
自分の生活の一部になることが
経年を愉しんでいる証
「旅行に行くとなったら必ずこれを持っていく」、「お風呂上がりにリラックスしたいならこれを着る」というように、気づいたら自分にとってすごく自然に馴染んでいるものこそ、経年を愉しみながら大事にしている証拠だと思うんですよね。例えるなら、「お刺身が出てきたらお醤油を無意識に手に取っちゃう」みたいな感覚。
いつもは部屋の隅に転がっているものだから特別に思っていなかったとしても、「長く使っているものってなんだろう」と思って部屋の隅から出して改めて眺めてみると、買った時よりもずっといい表情になっていることが多いんです。ふとした瞬間に「可愛いの持ってるじゃん」と改めて魅力に気づけることが、アイテムを長く使って初めて気づくことが出来る経年の魅力だと思います。
光石 研
俳優
1961年9月26日生まれ、福岡県出身。1978年、映画『博多っ子純情』で主演デビュー。以降、数多くの映画、TVドラマ、舞台、CMで多様なキャラクターを演じ、名バイプレイヤーの一人として唯一無二の存在感を放ち続けている。2022年2月に初のエッセイ集『SOUNDTRACK』(PARCO出版)、2024年5月にエッセイ集『リバーサイドボーイズ』(株式会社三栄出版)を上梓。