
穴が空いてボロボロなのがいい。
誰にも真似できない自分だけの生き様が毎日着るものに現れる。
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加賀美 健

時間が生む独特の風合いや深みを愛する人にとって、経年劣化はむしろ「経年愉化」。
この連載では、経年をポジティブに受け止め、自分だけの楽しみ方を見つけている人を訪ねます。
今回は、ジーンズに黒のトップス、足元はオーセンティックというシグネチャースタイルを何十年も続け、服や靴に穴が空いても使い続けている現代美術作家の加賀美健さんにお話を伺いました。「ただボロいだけなんだけど、着続けているとそれが自分のスタイルになる」と語る加賀美さんが考える経年の面白さを探っていきます!
\ 本編はYouTubeにてお楽しみください! /
どこへ行くのにも相棒の履き潰したオーセンティック

毎日履き続けていると、約1年でこれくらいの変化が出るそう。
服や靴などいつも身につけるものは、基本的に穴が空いたりボロボロになっても同じものを買い足して、ずっと着続けているものばかり。新品を着るのがすごく恥ずかしいんです。特に靴は、綺麗なものを買ったらわざと上から踏みつけたり雨の日に履いたりしますよ。かっこいい汚れ方をしたら、「お、この汚れ具合いいな」なんて嬉しくなるくらい。知らない人から見たらすごく汚く見えても、僕にとってはそれがすごく落ち着くんです。
普遍的なものも、
着続けることで自分だけのスタイルになる

外で干すときの日焼けでフェードしてしまったTシャツ。「これが今古着業界では流行っているらしいね。不思議だよね」と加賀美さん。
毎日着ている黒いTシャツ、実は洗濯を繰り返すうちに日に焼けて白茶けてしまったから、裏返して着ているんです。こんな服ばかり着ているからか、いつも同じような服だけど街で見かけると「加賀美さんだって遠目でもわかる」とよく言われます。普通に毎日着て毎日洗濯しているだけなんですけどね。一見シンプルに見えても、着続けることで僕にしかないスタイルになっているんだと思います。
本当に好きなものをずっと着ているだけ。
それが生き様になっていく

裏返して着ているTシャツ、キャップ、VANSのオーセンティック…、数十年同じアイテムを身につけている加賀美さん。
今って、すぐに結果を求める人が多いじゃない。でも、僕がやっていることって作品もそうだけどそれとは対極なんですよね。とてつもない年月をかけて地道にやってきたことが、自分のスタイルになったり仕事に繋がったりする。だけど続けようと思って続けてるわけじゃないっていうのがポイント。経年って、要するにただボロくなるってことなんだけど、カッコつけて言うならその人の生き様の現れなんだと思います。
加賀美 健
現代美術作家
1974年東京都生まれ。現代美術作家。東京を拠点に制作活動を行う。社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、彫刻、絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、メディアを横断して発表している。2010年に代官山にオリジナル商品などを扱う自身のお店(それ自体が作品)ストレンジストアをオープン。