Vol.27

いとしのマハ

先日BESSの展示場に行ってモデルハウスのドアを開けたら、なんとビックリ、廊下も間仕切りもないじゃありませんか!おまけに2階まで突き抜ける大きな吹き抜け。木そのままの壁と天井・・・まるでスッポンポン。こんな家ではどんな生活をおくることになるんでしょうか。

BIGFOOTBOY

 森鴎外「ヰタ・セクスアリス」の主人公は蔵の中で浮世絵を見つけて、ヘッセ「車輪の下」は青いスカートの娘のうなじに(なんとウブなこと!)、そして三島由紀夫「仮面の告白」は紺の股引に・・・おっと、これはまた別の方向に行ってしまうけど、ホント、目覚め●●●っていうのは人それぞれ。何を隠そう(ほんとは、恥ずかしいけど)、おいらの場合は、スペインが誇る異端の画家ゴヤの「マハ」。忘れもしない、あれは山の(ふもと)の小学校の図書室。画集をパラパラやってたら、いきなり目に飛び込んできた。ベッドに横たわる豊満な白い肉体。両手を頭の後ろに回して、挑発的な視線で艶然と微笑みかけてくる。おいら、ドキドキして、目が釘付けになった。あんまり息苦しくなって、もぐっていた水中から頭を突き出すように、ふと目を脇にやると、まったく同じポースで、こっちは輝く白い衣装を着ている。ゆったりとしながらも体のラインを浮き出させるフォルム、頬の赤みが増し、服を着ているのにかえって恥らっているような表情で、おいらを見つめる。衣装の下の肉体の息づかいが生々しく感じられて、不思議なことに「裸」以上に強烈な印象で迫ってくる。裸―着衣―裸―着衣・・・右に左に目が行ったり来たりする中で、おいら思った、健康的で、(せい)のエネルギーに満ちた「裸」があるから、衣装がそれを引き立て、豊潤さが増す。媚態が官能へと昇華する(なあんて、三島由紀夫気取ってるわけじゃないけど、クラクラする頭で直感的にそう確信した) 。
 細かい間仕切りも、梁を隠す天井板も、璧を(おお)うクロスもない・・・そう、BESSの家はまさに(スッポンポン)。だけど、ぶ厚い無垢材(ボディ)と、木のぬくもりと、心(いや)される香り・・・そんな肉付きも血色もいい裸の家だよ。その健康的な裸だから、“暮らし”という衣装をまとうと、いっそう生き生きと精気が満ちてくる。暮らしがグッと楽しくなる。
 厳格なカトリックの規律が支配する時代に、ゴヤは「裸のマハ」のおかげで異端審問にかけられ、誰のために何のために描いたのかと問い詰められても、最後まで口を割らなかった。だから今も謎のまま。

BESSのスッポンポンの家も、世の中の“常識”に照らして“異端”とされるなら、かえって光栄だね。頑固さではゴヤに負けないと思うよ。

「吐露byBESS」
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