時の年輪が床にも住む人にも
くっきりと浮き出てきた家

長野県駒ヶ根市 Yさん
カントリーログハウス /
延床面積146.02m2
4LDK+ロフト
[ BESS駒ヶ根(株)BESS信州 ]

展示場で帰ろうとしないわが子を
見て決めたカントリーログハウス。

18年前、精密機器エンジニアという仕事の都合で、神奈川から駒ヶ根へ移り住んだYさん。最初は単身赴任でしたが、子どもたちを自然の中でのびのびと育てたいという思いから、ほどなく家族を呼び寄せ、「アルプスが二つ映えるまち」への永住を決意します。そのとき生涯の伴侶として選ばれたのが、BESSのカントリーログハウスでした。
「家族で展示場に行ったときに、子どもたちがログハウスで遊び回ってなかなか帰ろうとしなかったんです。それを見て、自宅としてのログハウスに、気持ちがぐっと傾きましたね」
手頃な土地が順調に見つかり、ログハウスでの生活が始まったのが10年前でした。住み始めてみて気づいたのは、家族が皆ぐっすりと眠れるようになったこと。以前の住まいと違って壁が自然な木の色なせいか、夜10時になると自然と体が眠くなるようになったそうです。

階段は作品ギャラリー。色々な写真や手芸品も。

外壁、天井、階段、床、TV周り……
歳月が建物の内外に深みを演出。

家と同じログ材で建てた物置の外壁は、一度塗り直した家の外壁と違って一度も塗り直していないため、いい具合に色あせています。庭では、鉢植えから庭に移植したブラックベリーが、敷地を端から端まで縦断して生い茂り、ジャムの材料としてありあまるほどの実をつけます。
室内に目を向ければ、天井の材は端の方が収縮して中央部が若干丸みを帯びているよう。階段の手すりが微かに黒光りしているのは、幼かった子どもたちが滑り台がわりに繰り返しまたがって遊んだせい。
リビングのテレビ周りには、LP、カセット、レーザーディスク、MD、VHS、CD……と、時代の変遷を感じさせないではいられないAV機器の数々が。
そして、足元に目をやると、家族みんなが裸足で歩き回ってこすれたせいか、床材には木目がくっきりと浮かび上がり、2~3年くらいではとても出せない風格を醸し出しています。
「居間にずっと敷いてあるマットをめくると、木の模様が浮き出ている部分と浮き出てない部分の違いがくっきりわかりますね。住んでいる人の脂分がワックスのように働いたのかな(笑)」

娘の帰宅時間、息子の身長、父の幅……
10年の差月は住む人の変化も演出。

年輪を重ね、時を深めてきたのは、もちろん建物だけではありません。そこでともに暮らしてきたご家族にも、歳月は等しく降り注いでいます。
10年前の取材時にYさんの膝にちょこんと座っていた次女・Tちゃんは、もう高校生。当時「家に帰ってきたとき、煙突からすうっと出ている煙を見るのが嬉しい」と薪ストーブのよさを語ってくれた彼女ですが、「いまでは毎日帰りが遅くて、煙が出ていても暗くて見えないんです」とのこと。
一方、学習誌の付録についていた紙の望遠鏡を構えて満面の笑みで写真に収まっていた長男のK君は、来春の大学入試を控える受験生。10年前と比べると身長が約50cmも伸びて、すでに父親を追い抜きました。「自分は体重が3~4kg増えましたけどね」とYさんが冗談めかしていうと、「エ~、10kgでしょ」と奥様から鋭いつっこみが。長年のつきあいで醸成された絶妙の掛け合いといえましょう。
身体以外の面でもYさんの変化、いや、進化は生じています。たとえばそれは、新築時に迷わず備えつけ、一家の「幸せ度を左右する」アイテムとなったという薪ストーブの扱い。当初は火を付けるのに時間がかかりましたが、毎冬の実践の結果、今では空気を制御するコツをつかみ、新聞紙2枚とマッチ1本で瞬時に火を回らせることができるように。
高校時代以来の趣味であるコーヒーでも、その日その時々の豆の状態を見ながら、豆が欲しがる分だけ「湯を置いていく」という感覚に到達したのは、この家に来てからのこと。「最近やっとコーヒーを飲めるようになった息子に、コツを少しずつ教え始めていまして」というYさんの顔には、引き継ぐべき相手を見つけた喜びが漂っているようです。

Y邸に薪ストーブは不可欠。サクラやリンゴの薪を使うと明らかにいいにおいがするそう。

これからのY邸を左右する
ご主人の心境の変化とは?

そして、もう一つ見逃せないのは、心境の変化。会社勤めの常として「転勤の可能性もありますが、そのときは単身赴任すればいいって思っています」と語っていたのが10年前のYさんでした。事実、数年前には神奈川に単身赴任していた時期もあったそうです。
しかし、駒ヶ根のこの家で暮らして10年。いま転勤を命じられたら、もう単身赴任する気にはなれないかもしれない、とYさんはいいます。駒ヶ根を語る際に中央アルプスと南アルプスが欠かせないように、Yさんの人生を語るにはもうログハウスと家族が不可欠なものになっているのです。
「会社員生活から引退したら、このログハウスを改装して、古いクルマをリストアする仕事をやりたいと思っています。クルマをいじる傍らで、お客さんに旨いコーヒーを出せるようなスペースも作れたら、最高ですね」
次の10年間はわが子らの巣立ちを見守ることになりそうなYさんご夫妻ですが、寂しそうな素振りは微塵も見えません。バイク、クルマ、コーヒー、星観察、打ち上げ花火、和太鼓、焼酎、そば打ち、ガレージでの古カタログ整理……と、熱中する趣味がたくさんあって、寂しがっているひまなど皆無。時の流れとともに馥郁と醸成が進んでいるのは、ログハウスというよりもYさんの人生そのもの。熟成された焙煎香が漂う修理工場が当地に誕生するのは、そう遠くない未来かもしれません。

家族が集まるリビングでは、それぞれの居場所がなんとなく定まってきたそうです。

天玄関に掛かっているヘルメットは夏になると花火師に変身するというYさんの業務用です。

2階のオープンスペースはPCコーナー。懐かしい筐体(きょうたい)やYさん自作の真空管ラジオも!

2005年のY邸居間。紙の望遠鏡を手に微笑むK君と父の膝に座るTさんの姿を現在の写真と比べると時の流れが如実に感じられます。

2012年のY邸居間。人の姿は変わりましたが、家具の姿はほとんど変わっていません。物持ちのよさはYさん一家の伝統です。

「酸味が強いのは好きじゃない」とYさん。豆は近所の専門店のブレンドがお気に入り。

父が高校を卒業後に初めて買ったバイク、スズキのミニタン。次のオーナーは長男K君になりそう。

受けてきた資格試験の結果を母に報告する次女Tさん。広い台所ではどんな会話も弾む!?

昔は子どもの背丈しなかった庭の針葉樹が、いまでは3倍くらいに成長しました。