思わず深呼吸したくなる
澄んだ空気と晴天と美術の家

山梨県北杜市 Sさん
カントリーログハウス /
延床面積89.6m2
2LDK+小ロフト
[ 総合展示場「BESSスクエア」(株)アールシーコア ]

客人を出迎えるのは玄関先の
自作「トーテム・ポール」!

八ヶ岳の山麓、標高1300mの別荘エリアに、ひときわ存在感を発しているログハウスがあります。道沿いのエントランスに屹立するのは、北米先住民のトーテム・ポールのように派手な模様が描かれた3本の柱。今回の主役、Sさんの別荘です。
「もともとここにはカラマツとモミの木が何本も生えていたんですが、針葉樹の葉は扱いにくいし、また、ログハウスの屋根に葉が溜まってしまうので、2年ほど前に伐採したんです。それで、木を切っている途中でちょっと絵心が刺激されて、この3本だけは残しておいたわけです」
ピーラーで樹皮をむき、表面にグラインダーをかけてなめらかに。写真を参考にアレンジしたオリジナル・デザイン画を作成し、クレヨンとダーマトで下絵を描き、水性多用途塗料でペイント。1年近くかけて木を十分に乾燥させ、木の捻れを納めてから制作。柱の筋目がいい感じにうねっているのも隠れた見どころです。紋様の裏側にはアイダホ、ミネソタ、テキサス……とアメリカの州名が入ったナンバープレートが。これもこだわりのポイントでしょうか?
「いえ、全然。雑貨屋でたまたま見かけて買ってきたのをくっつけただけ。別に思い出の場所ってわけではないんですよ。絵柄の隙間を消すのにサイズがちょうどよかったわけ。魔除けを意識して派手な色を塗ったんですが、妻と娘からは気持ち悪がられています(笑)」

この地を選んだ決め手は
空気感と晴天率の高さ。

Sさんは現在63歳。東京のご自宅から愛犬ネオくんとともにこの別荘に通っています。以前は仕事が休みの日にだけ訪れていましたが、勤め先を3年前に勤め上げ、最近はこちらにいることのほうが多くなりつつあるとか。Sさんはどうしてここにログハウスを建てようと思ったのでしょうか。
「土地を探し始めたのは45歳くらいの頃。自然の中にログハウスを建てて、現役時は別荘として使い、定年になったら本格的に住むというイメージを温めていました。休みになると各地のペンションを回って候補地を探し歩きましたよ。私は絵を描くのが好きなので、題材探しも兼ねて画材片手にね。勉強のために、薪ストーブのあるログハウスのペンションにはよく泊まっていました」
妙高、戸隠、軽井沢、那須……と、業者主催の見学ツアーも利用して各地を探し歩いた後、たまたま「売地」の看板を見かけたのが現在の場所。東京から2時間半で来られること、予算との兼ね合い、それから当地の日当りのよさと湿気のなさが、決心を後押ししました。実は、この八ヶ岳南麓は日本有数の晴天率を誇るエリアなのです。
「本当にいつも晴れていますよ。このくらいの標高だと冬はかなり雪が積もるものだけど、このへんはそれほどたくさん積もらないのもそのせいでしょうね。日当りがいいからいつもカラッとしていて、洗濯物がすぐ乾く。空気に透明感がある。爽やかなにおいさえついているような気が します。
そういえば、ここにいると鼻の中が黒くならないんですよ(笑)。東京にいると排ガスで黒っぽくなるけど……」

ペンションを何軒も巡って
薪ストーブと丸太を実地体験。

足掛け6年にわたる理想の土地探しを経て念願のログハウスが着工されたのは、2001年。Sさんが52歳のときです。
いかにも丸太小屋という感じが強いハンドカットのログにも惹かれましたが、最終的に選んだのはマシンカットのD型ログ。
「あるとき、丸太のペンションに泊まりました。部屋に入ってしばらくは『やっぱ丸太はいいよなぁ』と思いつつも、自分の場合は、室内の壁が出っ張っているとちょっと圧迫感を覚えてしまうかも……と思ったんです。部屋が十分に広い場合は全然そんなことないんですけどね」
このカントリーログハウスの選択には、土地探しで泊まり歩いたときの実体験が大きく影響していました。

家主生来のアート心を体現する
キャンバスとしてのログハウス

Sさんのアート心が滲み出るのは、玄関先の柱だけではありません。室内の壁や自室アトリエには、プロ級の腕前が存分に表された作品が何点も。居間にはご自身の窯で焼き上げた見事な陶器の数々。好きなジャズの歴史をまとめたお手製年表の文字一つにも、粋人の感性が行き届いています。
そんなログハウスが建ってからすでに10年。見た感じ、そんなに年数が経っているように思えないのは、もちろんSさんがこまめにメンテナンスをしているから。外壁の全塗装もすでに2回は自分ですませたとか。屋根まで届く足場を知り合いの業者さんが組んだ後は、すべてSさん一人での作業。安全ベルトを締めて、万が一事故にあったときのSOSのために携帯電話を持つことも忘れません。 「ウォールナット系の塗料を何色かブレンドして好みの色をつくって塗るんですが、南側の壁と北側の壁では色の褪せ方がけっこう違いますね。南側はそれだけ日当りがいいということだと思います。」
やはりもって生まれた絵心が強いご主人。伐採後に残ったカラマツの木はもちろん、家の外壁から部屋の隅々にいたるまで、自分ならではの「色」をつけずにはいられません。Sさんにとって、この家と庭は、生涯をかけて塗り続ける自然の中の大キャンバスなのです。

階段を登りきったところ、天井の勾配があるスペースに水場を設置。作業場とギャラリーが融合しています。

トーテム・ポールを一番気に入っているのは 愛犬ネオ君だそうです。

南向きの大窓から陽光が存分に差し込むリビング。 年中カラッとしているので梅雨時も洗濯物で悩むことはありません。

左:クロケット帽、鹿の角、映画「ローハイド」のポスター…。アーリーアメリカンの空気が漂います。
右:台所手前の棚にはSさんが愛するバーボンの瓶が並びます。壁には奥様作のドライフラワーの数々。

木の香りが漂う壁を自由にギャラリーのように使えるのは、内側がフラットなD型ログならではのメリット。

愛用歴10年を越えてご主人はいまでは薪ストーブの達人。薪は「地産地消のために」、2~3年前から地元のカラマツやアカマツも混ぜて使用しています。

広々としたデッキは薪の乾燥場所。土台の組み方や薪の積み方を工夫して風の通りを確保しています。

この日のイーゼルにはリー・モーガンとキース・リチャードの絵が。「酒場でジャズメンが燻らせる煙に惹かれるんです」。

ジャズとフラメンコはSさんを語る上でのもう一つの大事な要素。「パコ・デ・ルシアは本当にイイんだよ……」。

カーテンのタッセルにビーズをつけた人形は奥様の作品。ジャンルは違えど、奥様も芸術家肌なのです。

開放感と空気の爽やかさで長居したくなる庭園。 心地のよいオープンカフェのようです。